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「札幌には間違いなくなかった場所」mocteco コーディネーター 西元 岳さんに話をききました。

 

こんにちは。エンブリッジでコーディネーターをしております、江川 南です。

前回、浜中さんのインタビューに思っていたよりも嬉しい反応をたくさんいただいて、コーディネーターの西元 岳(にしもと がく)さんにもお話をお聞きしてみました。

昨年エンブリッジでは、高校生・大学生に向けた創業支援プログラム「mocteco(モクテコ)」をはじめました。これまで大学生に向けた「長期実践型インターンシップ」をメインに取り組んでいたので「なぜ創業支援?」と聞かれることもしばしば。

2~3年前から「必要だよね」と議論が始まり、スタートした昨年は10チームがアイデアの実現にチャレンジし、今年の2期生もたくさんのエントリーをいただきました。

そして2年目となる今年は大変嬉しいことに、運営メンバーが2人から3人に増えました!3人目は、昨年開催したmoctecoのイベントに全て参加してくださった、フリーエンジニアの西元 岳さん。お誘いしておきながら「なぜmoctecoに関わろうと思ってくれたのか?」「参加者側から運営側に回ってみての気づき」などをお聞きしていきたいなと思います。

 


 

自分に素直に生きられない社会はもったいない。

江川:お忙しい中すみません、ありがとうございます。今日はよろしくお願いします!

西元:こちらこそよろしくお願いします!

江川:あらためてになりますが、岳さんが普段どんなことをしているのか、教えていただいてもよろしいですか?

西元:はい。フリーランスのエンジニアとして、創業初期の会社や個人の方が新しい事業を立ち上げるフェーズでのサポートを中心にやっています。立ち上げ期ならではの、変化が激しいフェーズに対応した柔軟な開発や、アドバイス・メンタリングなんかをしています。

江川:個人事業主として始めて3年目、今年28歳の年ですよね。そこに至るまでは?

西元:出身は札幌市で、転勤族だったので高校生までは道内を転々として過ごしました。大学は東京で、入学後は「ガジェット速報」というテック系メディアで機会をいただいて、ライターを始めました。たくさん記事を書いていくうちに努力が認められて、編集を任されたり、経営に関わらせてもらったり。事業が個人から法人化した直後で、「いかにもスタートアップ!」な体験をさせてもらって、「起業って面白いな!」なんて思って過ごした学生時代でした。

江川:現在はフリーランスのエンジニアとして活動されていますが、その職業が自分に向いているかもしれないな、と思った瞬間はあったんでしょうか?

西元: ITの面で言うと、昔から好きで触っていた、という一言に尽きますね(笑)

江川:なるほど(笑)エンジニアとして「0から1」のフェーズに携わる、というのは珍しいですよね。

西元:そうかもしれないですね。スタートアップの面白さを知ってしまったのも理由の1つなんですが、そこで関わった人たちって、いわゆる「道から外れた人」が多くて。僕自身、少々道から外れています。

江川:道から外れた、と言いますと…?

西元:転勤族で転校が多かったのですが、凄く良い雰囲気の学校もあれば、学級崩壊しているような学校もあって。特に、小学校高学年から中学校までは転校先が学級、学年崩壊していて大変でした。それを乗り越えて、南高に入学したんですけれども。

あたりまえといえばあたりまえなんですが、またまた真逆の雰囲気で。周りに馴染むように、合わせて生きていくのが辛いな、とふと気づいてしまったときには登校できなくなってしまって。結局そのまま高校を中退しました。

しばらく苦しい期間が続いたのですが、やっぱりITやりたいな、ということでなんとか大学に入学しました。入学したはいいんですが、周りより2年遅れていたこともあって、追いつくには他の人がやらないようなことをやらないと、と焦っていて。そんなときに出会ったのが「ガジェット速報」でのライターのお仕事で。

ガジェットが趣味だったこともあって、ダンボールを敷布団に数週間泊まり込んで働くくらいには楽しかったんですが、一方別の会社で、身近に長時間の労働に苦痛を感じている人がいて。周りのフリーランスのライターさんや、経営者の人たちが自分の道を楽しんで歩んでいるのと、普通に就職して苦しんでいる人たちのギャップが衝撃的でしたね。

そんな原体験があって、周りに合わせた結果自分の能力や適性を生かせなかったり、「自分のやりたいことや自分の気持ちに素直にいきられない社会」だったりって、めちゃめちゃもったいないな、と思うようになりました。

なので、勇気を出して自分の道を歩もうとする人たちの手助けをしていきたい思いが強くあります。最終目標は一人ひとりが自分らしく幸せであることだと思っているので、起業だったり自分でやるという選択肢があるんだ、という価値観が広がっていくといいな、と思っています。

 


 

moctecoは、やりたいことを素直に表現できる場所。

江川:去年は4回開催したmoctecoのイベントに全て参加してくれていましたよね。参加してみていかがでしたか?

西元:なんせ札幌でこういう空気感を味わえる場が今までなかったので、そこがいいなーって思っていましたね。東京で味わってきたような空気感を札幌で味わえるんだ!と毎回行くことが楽しみでした。自分のやりたいことを素直に表現して、試して、進んでいくのが恥ずかしくない場所。それがすごくいいなって。そういう空気に触れていたいですよね。

江川:すごくわかります。そうおっしゃっていただけるのはとてもうれしいです!逆に自分のやりたいことを表現できなかったり、試すのにも勇気が必要だったり、「意識高い」と言われてしまうような空気感の源泉って何なんでしょうね?

西元:教育がそういう風にできてしまっているのかもしれないですよね。今は少し変わっているかもしれませんが「言われたことをやる」というのが基本的な小中高の教育で。それが当たり前だという空気感のなかで、ちょっと独創性のあることをやろうとすると、変な目で見られたり多くの大人たちにとめられたりする。

そうやって育ってくると、強い原体験があったり、思い込みができるような子だったりしないと、自分のやりたいことを表に出したり、行動に移すのが難しいんじゃないかと思っていて、同世代でそういう話をしようとしても「何それ、真面目ぶっちゃって(笑)」と遠目から見られてしまったり…。どんなところでも出る杭は打たれるのかもしれないですが、そうではない場所が実は大学の外にあったりしますし、moctecoの価値ってそういう場をつくれていることだなって思いますね。

江川:毎回お呼びしていた講師の方々も印象的でしたよね。道外の方々が多かったですがいかがでしたか?

西元:実は友達がいっぱい居たので単純に楽しかったですね(笑)東京で感じていた空気感を札幌にも少し持ってこれたな、という嬉しさはありました。

江川:懇親会も楽しかったですね(笑)そして今年からは運営側に入っていただいてありがとうございます。理由として一番大きいのはどんなところでしょうか?

西元:浜中さんにお誘いいただいたのがきっかけでしたが、実際に去年も参加して面白かったですし、こういう場が広がっていったり、成長していくことに自分が寄与できたり、助けになるならやりたいなというのが素直な気持ちですね。あとは、もともと「技術力一本で食べていこう」とは全く思っていなくて、先を見据えた時にイベントの企画や運営に携わることや、グループで動く経験が自分の将来のためになるんじゃないか、と思ったことも大きいです。

江川:お話をお聞きしていると、岳さんはサポートすることが凄く向いていることが解ります。少し話は変わるんですが、私にとっては仕事って自己表現の手段と考えているんですけど、イベントの企画・運営って華やかそうに見えて、実は凄く裏方だったりするじゃないですか。今のお仕事もmoctecoの運営もどちらかというとサポートする立ち位置。岳さんは自分で何かを立ち上げたり、やりたくなったりしないんですか?

西元:共同創業という形で起業したこともあったんですけど、今のところはサポートすること=自分がやることだと思っていて、イコールになっています。ただ、なにか仕組みをつくりたいな、とは常々考えていますね。どこでなにをやればレバレッジが効くことができるのか、色々試しながら探っています。いずれにしても、今はサポートを求めてくれたり、頼ってくれたりする人が本当に多いので、真摯に向き合っていきたいですね。

 


 

僕たちが思っている以上に、やりたいことがある人はいる。

江川: moctecoに今年は10チームがエントリーしてくれましたね。札幌にも起業に興味がある学生は居るんだな、と思いますよね。

西元: LGBTと同じように、実は潜在的に凄く居るんじゃないかなと思います。6月22日に「SUMMER JOB FESTA」というインターンフェアがあって、moctecoブースを担当させてもらったんですが、想像以上にたくさんの学生さんが話を聞きに来てくれたんです。インターンを見つけるためのイベントということもあって、正直全然来ないんじゃないかと思っていたので驚きました。みんな興味があるけど表に出せていないだけなんだな、と改めて感じましたね。

▲ SUMMER JOB FESTA 2019

今の学生さんは技術の変化を敏感に感じていると思います。今ある仕事がなくなっていったりAIになっていったり、自分たちは将来何をしているのか解らない。不安ですよね。インフルエンサーや著名人にSNSなんかで必要以上に煽られてしまって、それが混乱の原因になっている可能性もあるなとは思います。

「好きなもの、やりたいことを見つけないと…」って思っている人は多いかもしれないですよね。やりたいことを見つけたいという人や、自分の進む道を探している人が、moctecoを通じて選択肢を広げてくれたらいいですよね。

江川:興味があることや、やりたいこと、好きなことを仕事にするというのが不安…という声も聞きますね。

西元:そうですね。仕事は仕事と割り切る人も居ますが、理想を追い求めるなら仕事も楽しい方がいいですよね。働くことが楽しいという感覚が得られる経験が一度もなかったり、趣味が楽しすぎて…ということもありますが、仕事がちょっと楽しくなるだけで人生の充実度って違ってくると思うんです。浜中さんがおっしゃっていたように「稼げるんだな」という感覚を小さくても得られるとそれが成功体験になって、仕事もどんどん面白くなっていく気がしますね。

江川:岳さんは仕事が楽しかったとおっしゃっていましたよね。そういった成功体験があったんでしょうか?

西元:WEBメディアにいた時の経験が一番大きいですね。「ガジェット速報」はもともと個人経営のまとめサイトだったのですが、それが一気に月1,000万PVを超えたり、大手企業の記者会見にいけるようになったり、事業を拡大してAIコメントシステムをつくったり。新しく事業ができていく過程って意外と泥臭いんだなーとか、スピード感すごいなー、とか。こんな風に自由に生きられるんだなーとか感じて、「自分もそうなりたいな」と思いましたね。

 


 

無責任に否定するのではなく、無責任に応援する。

江川: 1期生と2期生のつながりは、どうなっていくといいと思いますか?

西元:僕も東京のMAKERS UNIVERSITYというプログラムに1期生として参加していたことがあるんですけど、1期生と2期生だと結構近いので、対等な立場で交流できるのがいいところだと思います。今後続いていったときに後の世代に「僕たちの時はこうだったよ」「こんなことをやったよ」とみんなが伝えていってくれるといいですよね。

そうやって縦のつながりが生まれることがゆくゆくは札幌、北海道の文化の軸になっていくんじゃないかな。上の世代、下の世代にもそういう感覚を持っている人たちが居ると、きっと何か挑戦しようとした時にも挑戦しやすい空気感が生まれていくと思います。

▲ MAKERS UNIVERSITY 当時の様子

江川:北海道の文化でいうと、スタートアップの空気感が少しずつですができてきたような気がしています。

西元: そうですね。moctecoに関して言えば、学校の中で「これをやりたいんです!」と発信できるようになるまでには時間がかかると思うので、僕のようにちょっと道を外れたり、本当はやりたいことがあるんだけどどうしたらいいのかわからない、という人が集まれる場として認知されていくといいですね。moctecoが軸になって雰囲気や空気が変わっていけばいいなと思います。

江川:続けていくためにはやっぱり、支援してくださる大人の方々が居ることが大切だと思うんですが、逆に大人側に求められることって何だと思いますか?

西元:キックオフに講師として来てくださった土屋さんのおっしゃっていたことが素晴らしいなと思っていて。無責任に否定するのではなく、無責任にいいぞ!と応援していくことが大切だという(笑)大人にやりたいことを言ってみたり、相談した時に「ここは難しい」って否定から入ることがありますよね。

やりたいことを表現して、相談してくれた時点でまずは「いいね!」と伝える。思っていることや考えていることを伝えるのは勇気が要ることなので、まず言ってくれたことが素晴らしいなと思うんです。

江川:めちゃめちゃ共感します…!一方で、厳しく現実を突きつけることが正しい、と思っている方もいらっしゃいますよね。

西元:そうですね。そういった方は、悪い人じゃないですし、むしろ良い人だと思います。極端な話、もし親の立場だったら…と思うと心配する気持ちもわかります。なので、仕方ないなと思うんですが、従来の価値観や成功体験に捉われるのは良くないんじゃないかなと思っていて。

明日どうなるかわからないような激動の時代。そんな今を生きていくにあたって、リアリティを求めるほどリアルじゃなくなるというか…。時代を読み、そこを認識した上でアドバイスをいただけたらな、と思います。若者をあんまりナメないでほしい、という思いもありますね(笑)

江川:どういう人にmoctecoを知ってほしいなと思いますか?

西元:10代、20代の若い人たちには、moctecoを知ってもらえるだけ彼らにとって得だと思いますね。あとは経営者の方々や、自分でやってきたような方々には是非知っていただきたい。「俺たちの時にもこういうのがあれば…」という話になるような気がします。

江川:最近思っていることなんですけど、札幌の経営者の方々って常にお忙しい方が多いというか…。ご自身でやられている、プレイヤー気質の方が多い気がしているんですが、どう思いますか?

西元:プレイヤーとしてもめちゃめちゃやってるタイプか、代変わりして全国展開もして…というタイプが多いような気がしています。経営者だけど全部任せています、という若い人は、まだあまり居ない印象がありますよね。お越しいただきたい方は忙しい方が多いと思うんですが、12月21日は是非空けておいていただいて、DEMO DAYに足を運んでほしいですね。「ここが札幌の最先端だ」「札幌はここに起業家が集まっている」と噂になってほしい。

江川DEMO DAYはどんな場になっているといいですかね。

西元:誰か登記してくれないかな(笑)1期生では山本くんが今年実際に株式会社を設立しましたよね。一番危険なのは、学生がとりあえず遊びでやってみただけでしょ?という雰囲気で見られてしまうこと。

本当に、本気でやっているんだ、というところを見せられるといいですよね。それが一番解りやすいのが登記かなと思ったんですけど、まだ早いかもしれないですね。まずは100円でもいいから稼いでほしいです。

江川:2期生のメンバーに対して伝えたいメッセージはありますか?

西元:素直にやりたいことをやってくれ。その一言に尽きます。誰かに相談したり、人に話したりしている時に自分を偽ったり、よく見せようと思って誤魔化してしまったり…。嘘ではないんだけど本心からずれていることをやったり、言ったり、周りを見てしまうと、やっていくうちに「あれ?なんでやっているんだっけ?」となってしまうので、素直に自分の感情に従って進んでいってほしいなと思います。

江川:自分の感情に素直になる。これって何事においても大切ですよね。と言いつつ自分では気づけない場合もあるのかなって思うんですが、素直になるコツってありますか?

西元:自分のやっていることや言っていることに違和感を感じたら自分をみつめる時間をつくること、ですかね。でも、元々考えるタイプの人は考えれば考えるほどドツボにハマってしまうこともあるので、自分は慎重派だなと思ったら少しずつ行動しながら考えて…と意識するといいと思います。考えることと行動することのバランスは大切ですよね。

江川DEMO DAYにはたくさんの人に来てもらえたらいいなと思っているんですが「これって自分と関係あるのかな?」と思っていらっしゃる方も多いんじゃないかなと思っていて…。そんな方々に向けてメッセージをお願いします。

西元:いやー、伝え方は難しいですよね。でも、moctecoはこれからの世代のあたりまえの在り方を示す、スタンダードになっていく場所だと思っています。札幌には間違いなくなかったです。まず、とにかく見てほしい。エントリーに興味がある人はとりあえずしてみたらいい。絶対に経験として将来に生きてくるはず。少しでも惹かれるものがあったら、なんでもいいから来てほしいですね。損はしないと思います!

江川:そうおっしゃっていただけるとわたしも嬉しいです!ありがとうございました。

 


 

まとめ

運営メンバーで週に一度ミーティングをしているため、お会いする機会が格段に増えたのですが、いつも変わらず柔らかく丁寧に接してくださる岳さん。その背景には学生時代の苦節、様々な方々との出会い、たくさんの挑戦と努力があったのだな、とあらためて思いました。

実はわたしも1991年生まれで岳さんと同い歳。お話も共感することばかりで、やっぱり同年代で志が近い方が同じ場所に居ることはとても心強いし、一緒に何かをつくりあげるのも楽しいです。moctecoもそんな場になれるといいな、と思っています。岳さんの学生時代の経験などを知り、勇気が湧いた方も多いのではないでしょうか。お話いただき、本当にありがとうございました。

自分の気持ちに嘘をつかず、素直に生きようとしている岳さんだからこそ、やりたいことがある学生の気持ちを肯定し、応援できるのだなと思います。

今年は12月21日にDEMO DAYを開催します。2期生の集大成となる場ですので、3期生としてエントリーに興味がある方もぜひお越しください。まだ予定がわからないという方も、Facebookイベントページがありますので、ぜひ「興味あり」にしておいていただけると嬉しいです。

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